【名曲名盤】シフリン『モーツァルト:クラリネット協奏曲・五重奏曲
天才にもいろいろなタイプがいるが、モーツァルトはあまりに多作タイプなので絞るのが難しい(ダ・ヴィンチみたいな寡作の天才もいる)。今年はモーツァルト生誕250周年なので、さらにCDも増えることだろう。このコラムはどうせ素人の感想文なので、やはり好きな曲・好きな演奏を扱うのが一番を良いと思い、今回はクラリネットのデヴィッド・シフリンを採ることにした。
協奏曲の方はK.622で、モーツァルトの最晩年に作曲されたものの一つ。第2楽章を絶賛する方が多いが、小生のようなド素人には第1楽章の方が入りやすい。出だしからモーツァルト・ワールドが広がり、楽しい気分にさせてくれる。元来、私にとって協奏曲はオケとソリストが戦う感じ=バトルものが最高に好みである。チョン・キョン・ファン然り、アルゲリッチ然り、デュ=プレ然りである。ところが、このシフリン盤は逆で、オケと融合・共生していく。今回、聞き直して初めて気が付いた。つまり、モーツァルトの曲そのものが対立・戦いというものと相容れないのであろう。
五重奏曲の方は、室内楽にあまり通じていない私でもこれは嵌るかも、と予感させてくれる内容だ。こちらも私は第1楽章がお気に入りで、何度聞いても飽きさせない。この曲も死の2年前という厳しい状況下で作られているのに、憂いを帯びながらもモーツァルト・ワールド全開の楽しさ・喜び・幸福感に満ちてあふれている。
天才の一つの天才性は時代を超えた息の長い作品の生命そのものにあるのだろう、と思った。
David Shifrin, Gerard Schwarz, Mostly Mozart Orchestra『Mozart: Clarinet Concerto, Quintet』 Delos 1984注)
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