いつも心に音楽と、山と

さすらいの教師takebowの趣味の部屋

金曜日, 1月 12, 0019

【名曲名盤】ウルフルズ『バンザイ』


それまで業界人・マニアに受けていたウルフルズというバンドを聞いたのも、このアルバムが最初であった。ベタベタの大阪テイスト。こてこての引用。ロックファンなら「暴動チャイル」のネイミングには必ずニヤリとさせられるはず。「歯竹強」ことトータス松本の分かりやす~い暑苦しさが、ステレオタイプの「大阪」にピッタリだった。遊び心などというヤワなものではなく、「なにが何でもうけてやる」という曲作り。ファンク系からビーチボーイズばりのサーフィンサウンド、しっかりした音作りがしつこいまでの歌詞をガッチリと離さない。流石、伊藤銀次プロデュースといえるだろう。しかし、「バンザイ~好きでよかった~」や「ガッツだぜ!!」の爆裂パワーに隠された、「泣きたくないのに」というバラードこそ彼らウルフルズの神髄であり、大阪系アーティストの正統な継承者としての証明でもある。
今回10年ぶりにアルバム全体を通して聞いた。関西から東京に逃げ帰った私に今でも「良い処やで」と呼びかけてくる。「泣きたくないのに涙が僕にせめてくる」


ウルフルズ『バンザイ』 1996/01/24 東芝EMI

火曜日, 1月 09, 0019

【名曲名盤】ジャクリーヌ・デュ・プレ『ドボルザーク:チェロ協奏曲』


ジャクリーヌ・デュ・プレ讃歌

早く逝ってしまった天才に思いを馳せる時、何と自分の無為な人生かと嘆きたくなる。吉田松陰29歳、フィンセント・ファン・ゴッホ37歳、そしてジャクリーヌ・デュ・プレ42 歳。小生のような凡人の生きている分を、彼らにあげられたらどれだけ多くのことを成し遂げられただろうと思う。ジャクリーヌの場合、16歳でデビューした が活動時期は10年ほどで、残りは病魔と闘いながらの後進育成にあてられたので、後半の16年ほどは苦悩・苦悩の連続だったことだろう。

私 はチェロという楽器が好きだ。低い音もしっかりと出せるところに惹かれるのかも知れない。そしてカザルスなど尊敬するチェリストが多いのも理由になって いるが、その中で何と言ってもナンバーワンなのが、ジャクリーヌ・デュ・プレその人である。彼女の代表曲とされるエルガーのコンチェルトよりも、今日の一 枚『ドボルザーク:チェロ協奏曲』の方が私のお奨めだ。前者は彼女の悲壮な運命を重ね合わせて聴かれる方が多いし、デビュー16歳という年齢とは思えない 奥深い演奏で魅力タップリではある。しかし、そういった諸々がイヤなのだ。明るくステキな笑顔を見せているそんなジャクリーヌに会いたい。陰影がありつつ も彼女の陽性が弾けて欲しい。そんなファンも多いと思う。ジャクリーヌは女性とは思えないほどの音を出していたという。確かにこのCDのバレンボイム&オケでは太刀打ち出来ていない。彼女の音に直面・対座したい。奥深さ・奥行き、そして明るさ。いつまでも輝いている音に。

今も心に残る一輪のバラ、ジャクリーヌ・デュ・プレ。CDなどでその音に触れられるのは、我々に与えられたたった一つの幸運と言えるのだろう。


Jacqueline du Pre 『Dvorak, Anotnin: Cello Concerto in B Minor, Op. 104』 1970.  EMI

月曜日, 1月 08, 0019

【名曲名盤】デューク・ジョーダン『フライト・トゥ・デンマーク』


何とチャーリー・パーカーの時代からのキャリアの持ち主。ばりばりニューヨーク生まれの黒人ピアノ弾きなのに、後半生は北欧で生活されて、このアルバムもタイトル通りデンマークで録音されて、Steeple Chaseレーベルから発売されている。

ジャ ケットが雪の中で佇むデューク・ジョーダンなので、冬場に好んで聴く人が多いようだ。確かに薪ストーブの前で、スコッチ片手に聴くと良い雰囲気、最高 だろうなぁ(もちろんやったこと無いけど)。名曲No Problem(危険な関係のブルース)も良いのだ(この名曲、デューク・ジョーダン作曲なのだ)が、Everything Happens To Meの「いぶし銀」のような光を放つ名演に惚れております。トリオの支えがあってのリーダー作だと思うのですが、特にドラムのエド・シグペンの「出しゃば らない」感が心地よいです。デューク・ジョーダンもリズム隊にまかせて、自由にテンポを変えています。Glad I Met Patの高音部を弾くリリシズムは最高。On Green Dolphin Streetもマイルスの演奏とは異なるが、刻んでくる感じのブロック・コードがとても「鯔背」な感じがするんです。

小生がライブを見た数少ないアーティストの一人でもある、名ピアノ弾きで名作曲家のデューク・ジョーダンは2006.8.8、デンマークで死去された。享年84歳。         合掌


Duke Jordan  『Flight To Denmark』  Steeple Chase  1973

日曜日, 1月 07, 0019

【名曲名盤】スーパーギタートリオ『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ』


三人のスーパー・ギターリストがコラボったアルバム。パコ・デ・ルシアアル・ディ・メオラジョン・マクラフリンの三人で、後二者は小生の守備範囲JAZZ(というかフュージョン)なので馴染みが深かった。しかし、パコがディ・メオラのソロアルバム『Elegant Gypsy』 でアコースティックを早弾きしているソリストとは気づかなかった。兎に角、このパコが凄い!マクラフリンですら一杯いっぱいじゃないか、と思えるテクニッ クの嵐。小指動きまくり。フラメンコギターの奥の深さを思い知らされた。構成は2人ずつ組んで3曲を、残り2曲をトリオで、となっている。1曲1曲が長く 8分かそれ以上なので、余程の音楽性・演奏技術・引きつける魅力がないとダレてしまうのだが、彼らにそんな心配は御無用だ。6弦×3本のギター=18本の 弦が奏でているとは思えない音楽世界が広がる。電子楽器の人工音の及ぶ範囲では無く、まさに神の領域に達している。トリオ作品なのでお奨めは、ギターバト ルとも言える4曲目の「Fantasia Suite(幻想組曲)」なのだが、個人的にはオープニングのパコ&ディ・メオラの「Mediterranean Sundance(地中海の舞踏)」の壮絶な演奏を、「これを聴かずしてギター音楽を語る勿かれ」という名演としてお奨めする。

その後、トリオが十数年ぶりにアルバムを発表し、日本でもコンサートを開いた。小生も幸い観ることができたのだが、やはりこのアルバムの衝撃波には叶わないのであった。


Al Di-Meola,John McLaughlin,Paco De Lucia『Friday Night In San Francisco』 1980 Columbia

水曜日, 1月 03, 0019

【名曲名盤】四人囃子『一触即発』


ピンクフロイドの「エコーズ」を完璧にコピーする日本人バンドがある、という噂をその昔聞いた。バンド名は四人囃子。彼らのファーストアルバム『一触即発』 はとても高い評価を受けていた。しかし当時、少年であった私には余分なレコードを購入する経済的な余力もなく、また曲の長さからラジオ等で全てかかること もなく、未聴のまま憧れだけが増大していった。まさにプラトンのエロース状態。このアルバムは私にとってイデア界に鎮座ましましたのである。社会に出て自 由になるお金ができた時にはこの作品もCDになっており、私がやっと聴くことができたのはこのCD盤である。おまけにCDシングル「空飛ぶ円盤に弟が乗っ たよ」がついていた。
何よりも吃驚したのはアルバムを通しても35分に満たない、その量的な部分に愕然とした。おいおい第九の半分かよ、と思いな がら、かけるとそこには日本語 によるプログレッシブ・ロックが詰まっていた。森園勝敏氏のボーカルが眠たさを誘い、「はっぴいえんど」を思わせる感じがあって、初めは違和感があった。 しかし聴けば聴くほど、所々ELPやキングクリムゾンを思わせる曲調もあり、とても馴染めるモノになった。プログレはややもすると、環境音楽やイージーリスニングのような(現に『狂気』はそのためにアメリカで売れた)扱いを受けるが、彼らの音楽性は幅・奥行きともに広くまさに世界レベルだった。「おまつり」「一触即発」は草創期日本語ロックの到達点を示している。まさに日本ロックのエイドスであったのだ。

彼らを有名にしたピンクフロイドの呪縛は、彼ら自身の活動を制限し続け、その後の自由を奪ったと思えてならない。ここに日本のロックの宿命を感じる。


四人囃子『一触即発』 1974 TAm

月曜日, 1月 01, 0019

【名曲名盤】アルゲリッチ『チャイコフスキー:ピアノ協奏曲』


以 前から馴れ親しんだ作曲家にチャイコフスキーがいる。もっとも彼のバレー曲を聞く程度だったので、大したモノではない。やはり曲調からイメージしやすい ので、ロック野郎の私にも聞きやすかったのだと思う。バレー自体は見たこと無いのに、曲だけで理解できるのは大したモノである。

クラシックが好きになってから知ったピアニストがマルタ・アルゲリッチだ。 彼女は実に繊細な表現をする反面、ほぼ前面に出ているのは激しい、情熱的な、熱い演奏である。きっと彼女は男性なんだと思う。その剛毅な面は、お子さんた ち一人一人の父親が全て違うという点にも現れているかも知れない。そんな剛胆なアルゲリッチが日本の、しかも大分の、別府で毎年のように音楽祭を 開き、コンサートを行っている。今、私が本気で観たいアーティストNo.1の彼女。未だにお目にかかれてはいないが、CDのおかげでお耳に?はかかれてい る。ショパンコンクールの衝撃のデビューもいいが、このチャイコは最高だ。オケが負けてしまうのでは、と思えるほど力強い演奏である。みなさんは冒頭から 巨大なT.Rexと戦うヒーローのようなアルゲリッチに出会うことでしょう。

ソリストというのは豪快な表現力、個性が必要なのだろう、それが分かる一枚である。


Martha Argerich, Kiril Kondrashin, Bavarian Radio Symphony Orchestra 『Tchaikovsky Piano Concerto No.1』 1980 Philips

【名曲名盤】エラ・フィッツジェラルド「Mack The Knife」


エラ。ジャズボーカリストの最高峰、20世紀の文化遺産、the First Lady of Jazz。ありとあらゆる賛辞が彼女、エラ・フィッツジェラルドには与えられているが、それらはこのアルバムの、この一曲にこそ相応しいと私は感じる。

最 盛期のエラがまだ東西に分断されているベルリンで見せたパフォーマンス。ドイツならではの御当地ソングとしてクルト・ワイルの歌を取り上げたのだろう が、彼女ならではの自由奔放さによってその世界は広がっていく。スキャットあり、サッチモあり、音の高低だけでない広がりあり。まさに宇宙的に広がってい く様は、ジャズのライブならではであろう。ライブのもつ楽しさ・ノリ・アドリブ・感動がこれほど詰まっているアルバムも珍しい。私の持っているCDは旧盤なので曲数が少ないが、今出ているのは『完全版(+4)』と銘打ってコンサートの全体像がつかめる感じなのだろう。ただ、私にとってこの盤はこの「Mack The Knife」の名演のみで充分、多くを望んではバチが当たると言えるかも知れない。

エラ・フィッツジェラルドはジャズそのもの。ボーカルこそ最高の楽器と実証してくれる歌姫である。


Ella Jane Fitzgerald 『Ella in Berlin』 VERVE 1960