いつも心に音楽と、山と

さすらいの教師takebowの趣味の部屋

土曜日, 12月 30, 0018

【名曲名盤】T・チャップマン「Talkin’ About A Revolution」


その歌い手はギター一つで何万もの観衆を相手に歌い出した。

♪Don't you know
♪They're talkin' about a revolution
♪It sounds like a whisper

観 衆は歌に引き込まれ、波を打ったようになる。ネルソン・マンデラの70歳の誕生日を祝うイギリスでの記念コンサート(Nelson Mandelay's 70th Birthday Tribute Concert)の1シーン。低い、低い歌声。歌い終わると、頭を下げて颯爽とステージそでに消えていく。これが彼女、トレイシー・チャップマンとの出会 いであった。黒人の女ディランという感じの勇姿。格好良かった。

この曲を収録したデビューアルバムは グラミー賞を受賞する大ヒットアルバムとなり、中でも2曲目の「ファスト・カー」はシングルとしても大ヒットしたのであった。だが、私にとってのトレイ シー・チャップマンは「トーキン・バウト・ア・レヴォリューション」を切々と歌い上げる吟遊詩人であり、アメリカで「革命の到来」を予感させるという実に 矛盾した魅力をもった歌い手として、今でもお気に入りの一人である。その後、原点回帰のように黒人音楽・アフリカの民族音楽のリズムを取り入れていった が、残念ながらこのデビューアルバム程のインパクトはなかった。このアルバムのもつパワーはまさに時代と、才能と、に裏打ちされたモノだからこそ輝いて見 えたのだろう。

本当に囁かれていたのだ、「知らないのか、奴ら、革命について話してるんだぜ」って。


TRACY CHAPMAN『TRACY CHAPMAN』 1988.04  Elektra

金曜日, 12月 29, 0018

【名曲名盤】槇原敬之『LIFE IN DOWNTOWN』


才能のあることは分かっていました。でも、同性愛やら、クスリやら、彼についてはとっても理解できないことが多かったのも事実です。そうそう、事件になったこともありましたね。常にトップを走ることを強いられ、転落していったアーティスト。そんなのイメージに彼、槇原敬之はピッタリでした。

と ころが、スマップに「世界に一つだけの花」を書いた頃から、何かそれまでとは違って来たという感じがありました。なぜだろう。どうやって吹っ切ったのか なぁ、と気にはなっていたのですが、私はファンでは無かったので触れずに来ました。そんな時、NHKの「音楽の遺伝子」と言う番組で、美輪さんの「ヨイト マケの唄」を歌う槇原敬之を見ました。唄は、はっきり言って、ピンと来なかったです。でも、あの唄のもつ意味をまじめに受け止め、自分なりに表現しようと いうアーティストとしての根性とか、魂とかみたいなモノがひしひしと伝わりました。自分の背負う原罪のようなものを、彼が乗り越えられた原因は、これか。

そして、最新アルバムを 聴きました。詰まってました、普通の人が、普通に生きて、普通に喜びを感じられる曲・曲・曲・・・・・・。つらいこと、悲しいこと、へこんだこと、怒りが こみ上げること、苦しいこと。日々、生きていく中で必ず発生する嫌なことの集団にどう立ち向かうのだろうか。また、向かい合うべきなのか。まっきーに教え られたような気がします。「下町」の何気ない人情や飾り気のない人間関係に込められた、彼の優しさ溢れたメッセージがじ~んわりと染みてきます。

稀代のメロディメーカー槇原敬之は、ココロノコンパスを持って、より高みに向かっている。彼は果たして「約束の地」を見ることが出来るのであろうか。

槇原敬之『LIFE IN DOWNTOWN[Limited Edition』 2006 東芝EMI